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2月1日(日) 記念講演 <指導しない指導のススメ>(講演要旨)
講師:畑 喜美夫 先生
トップダウンの指導の弊害
県立高校のサッカー部顧問になったが、そこには自ら考えようとせず、部活動をやらされている部員たちの姿があった。監督主導の、つまりトップダウンの指導の弊害が選手の想像、判断、実行する力を削いでいるように思えた。人は言われてばかりいると考えなくなってしまう。
多くの指導者が目先の結果に翻弄されるなかで、自分は選手主導の、「ボトムアップ」という、むしろ遠回りの道を選んだ。それは、選手自身で自主性・主体性をもって常に考え、創意工夫して物事をやり遂げ、全体をまとめていく方法。カリスマ監督がいなくなった瞬間、輝きをなくしてしまうようなチームにはしたくなかった。
神様はきれい好き
生徒が進んで校門で全校生徒に挨拶しているのをはじめ、「神様はきれい好き」、「整理整頓は心の準備」と教え、生徒は部室は勿論のこと、身の回りをきちんと整理しだした。そして、自ら見聞きしたことに感じ、気付き、吸収し、自分の行動に移せるようにもなってきた。いい意味の「こだわり」が、パスの精度につながった。
心と体の休息のためには全体練習日を週2回に減らし大丈夫かと心配されたが、心拍数180以上の脈拍トレーニングなど、むしろ質の高い練習を実現。疲労による怪我も減り、やがて選手たちにフリー練習の課題や構成を自ら考える習慣がついてきた。「空いた時間」が活かされたのだ。
多くの部員と監督を繋ぐ2種類のサッカーノート。技術ノートには、個々の悩みが切々と書かれていて必要なトレーニングが見えてくる。一方のコミュニケーションノートには時に「彼女ができました」という記述も。
想像力と信頼感が満ちてきた
選手、監督、父母、OB、地域と、「人間力の育成」というビジョンを共有。部活動に想像力と信頼感が満ちてきたとき、チームは強くなっていた。サッカーはサッカーだけで上手になるのではなく、サッカーは、日常生活を含んだすべてで強くなる。遠回りと思っていたボトムアップは、むしろ近道であった。
その後も、試合では選手自らがスタメンや交代選手を決めているし、選手権では、国立の舞台をかけた試合で、ディフェンスの修正点に気づいていたものの、敢えて指導せず敗れたという象徴的な出来事もあったが、監督から最後まで信じてもらえたことを理解している選手達は、敗戦に多くを学んで社会性、人間性を培かい、今は全員が立派な社会人になっている。彼らは部活動を通じて、いつしか社会を生き抜く力を体得していたのだ。指導者は、リーダーであり、支援を旨とするファシリテーターであると確信した。
「与える」ことよりも「引き出すこと」
「与える」ことよりも「引き出すこと」が大切と考えており、これが「指導しない指導」である。この考え方は、部活動ばかりでなく、学校や企業経営などにも通ずるところがある。ボトムアップ理論を導入したチームや企業では、それぞれの目標に向け、さらなるレベルアップが図られており、進化を楽しみにしている。
何のために総合型スポーツクラブを立ち上げ、運営しているのか。今、クラブのミッションやキーワードは何か。スタッフ間でビジョンは共有されているか。誰かにやらされていないか。会員のスポーツマインドを引き出しているか。もっと素敵なクラブにするにはどうしたらいいなど、10周年を迎えたふちゅうスポーツクラブへの問いかけは、競技スポーツに携わる指導者、選手への問いかけと通ずるところが多い。PDCAサイクルを質高く、かつ、早く回すことが大切である。
真の失敗とは「挑戦」しないこと
子供たちには、挑戦無くして成長なし。失敗こそが成功のチャンスと伝えている。そして、真の失敗とは「挑戦」しないことである。自主的・主体的に動ける個人・組織がこれからの未来を輝かしいものにしてくれると確信している。
NPO法人ふちゅうスポーツクラブの一層の発展をお祈りしている。
<指導しない指導のススメ>講演 |
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畑先生 |
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